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第284話

弥生がそう言うと、それまで少し恥ずかしそうだった古奈の顔色が一瞬で変わり、唇の血の気が完全に引いてしまった。

「何を、何を話すの?」と、彼女はどもりながら尋ねた。

「もちろん、人生について話すよ」弥生は微笑んで答えた。

「どう?話したくないの?」

古奈が緊張してスカートをぎゅっと握っているのを見て、弥生は思わず笑ってしまった。「そんなに怖がらなくてもいいわ」

「そ、そんなことはない、私はただ......」

「行きましょう」

弥生はすでに立ち上がっていた。

古奈は下唇を噛み、座ったままで悩んでいる様子だった。弥生は彼女の様子を見て、自分が何を話そうとしているか、古奈もだいたい察しているのだろうと感じた。

焦らず、弥生は折衷案を提案した。

「病院の外にコンビニがあるの、知ってる?」

この言葉に、古奈は少し驚いた様子を見せたが、それからゆっくりと頷いた。「うん」

弥生は腕時計をちらりと確認してから言った。「私はそこで30分待つわ。もし30分後にあなたが来なければ、私は帰るわ。その間に、来るかどうか決めてちょうだい」

弥生はそう告げると、もう古奈を悩ませることなく、すぐに病院を後にした。

古奈は考え込むように弥生の背中を見つめ、指の爪が手のひらに食い込むのを感じた。

行くべきか、行くべきではないか? どちらにしても彼女は自分の意思を尊重してくれるようだ。もし自分が行かなければ、彼女はもう自分を追いかけてこないだろう。

「古奈ちゃん」

そのとき、麻由子が診察室から出てきて、古奈を呼んだ。

古奈は我に返り、すぐに母親に駆け寄って尋ねた。「お母さん、どうだった? お医者さんは何て言ってた?」

麻由子は前よりも少し気分が良さそうだった。「お医者さんが言うには、大したことはないそうよ。私が考えすぎているから、もっと気楽にするようにって」

古奈は頭を下に向いて、思わずため息をついた。「私のせいだよね」

「わかってるならいいわ。母さんは最近食事もうまくいかなくて、随分痩せちゃったのよ。だからもし母さんを心配してくれるなら、ちゃんと言うことを聞いて、この問題を早く片付けなさい......」

そこまで話したとき、麻由子は急に言葉を止めた。「ここだと誰かに聞かれるかもしれないから、ここで話すのはやめよう。誰かに聞かれたらまずいわ。とにかく、早く決断し
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